文學界7月号新人小説月評

月評7月号シリン・ネザマフィ「拍動」(文學界) まず日本語を母語としない人間が、これだけの文章を書くことに驚く。言われなければ外国人だとはまったくわからないにちがいない。文学的な印象の文体だ。今の若手作家のなかには、もっと砕けた口語調の文章…

牧田真有子「夏草無言電話」

(前略)今回取り上げたいのは、牧田真有子という作家の「夏草無言電話」という作品。二十八歳というからまだ若い人ですね。十ページ程度の短い作品なんだけど、とてもよかった。高校生の少女が、突然「当分しゃべることをやめる」と宣言するところから始ま…

文學界六月号新人小説月評

月評六月号羽田圭介「黒くなりゆく」(すばる) 先々月のすばるに掲載された「御不浄バトル」では、この作家はブラック会社で働く若いサラリーマンの八方ふさがりの状況を淡々としたタッチで描いていた。それは出口のなさに由来する怒りや絶望さえも、生々し…

「文學界」5月号新人小説月評

風邪の子どもの世話であやうくアップし忘れるところだった。5月号。「群像」が、新鋭短編競作と題して8編の作品を並べている。一編400字詰め原稿用紙で3,40枚といった短さのせいもあって、強烈な印象の作品はない。ただ偶然にも、オーソドックスなリアリズ…

「文學界」4月号新人小説月評

4月号の月評です。雑誌に載ったのは、基本的に下記の文章を縮めたものです。 総評 今月読んだ作品のなかで、とびぬけた読後感を与えたのは青山真治だった。ごく短い作品だが、すぐれた小説ならではの一気に世界が広がっていく感触がある。一方、技術力を見せ…

「文學界」3月号新人小説月評

新人小説月評第二回。先月の「文學界」に掲載されたもののロングヴァージョンです。追記は3月8日現在のもの。あと、「文學界」って毎月6日発行だったのですね。8日だと思っていてアップが遅れてしまいました。原田ひ香「東京ロンダリング」(すばる)住人が…

「文學界」2月号新人小説月評

この一月から半年間、雑誌『文學界』の新人小説月評の頁を担当させていただけることになった。これは文芸五誌に掲載された「新人」の作品を漏れなく取り上げて評を加えていくというものだ。ただ、月によっては十数編の作品を取り上げることもあるそうで、わ…